2021 年 8 月 13 日
全米の集中治療室および救急医療施設のフロアでは、毎年推定 30,100 件の中心静脈ライン関連感染症(CLABSI)が発生しています1。
カテーテルに由来する血流感染症はカテーテル関連血流感染症(CRBSI)と呼ばれ、中心静脈ライン関連感染症(CLABSI)と PVC-BSI などの末梢血管に関連する感染にさらに分けられます2。
これらのタイプの血流感染症(BSI)はどちらも、一次性感染および二次性感染に分類できます。
BSI の一次性感染は、患者の身体の別の部位に起こった感染に続発するものではない、院内で確認された感染です1。
そして、BSI の二次性感染は、挿入または血管アクセス装置の挿入部位とは関連のない部位から「播種」した感染です1。
BSI は様々な原因で発生しますが、ここでは、輸液、血管アクセス装置の挿入と維持に関連して起こる場合に注目します。そのような感染原因には以下が含まれます。
- – 医療チーム側の不適切な手指衛生2
- – 挿入時の無菌技術の誤り2
- – 以下のような感染症の早期兆候の見落とし2(これらに限定されない)
- 紅斑
- 浮腫
- 疼痛
- 圧痛
- ドレナージ
- 挿入部位の皮膚損傷
- 体温の上昇
- – 非効果的なドレッシング材の交換2
血流感染に関連する微生物の種類
BSI は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌3,4、および酵母菌によって引き起こされます。グラム陽性菌のうち、最も一般的な原因菌は黄色ブドウ球菌、腸球菌属、肺炎球菌です。また、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)も、BSI を引き起こすことが多いグラム陽性細菌です3。
BSI 患者から単離されるグラム陰性菌で最も一般的なものは、クレブシエラ属、大腸菌、アシネトバクター属菌です3。
そして、BSI を引き起こす一般的な真菌種は、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・アルビカンス、およびクロコウジカビ4です。
血流感染の影響
CLABSI は入院期間の延長、患者および医療システムへの費用増加、敗血症、最終的には死亡に対するリスクを高める可能性があります5。
加えて、過去数十年間で、BSI を引き起こす多くの微生物は抗生剤耐性を増しています6,7。バンコマイシン耐性耐性腸球菌(VRE)6 と、メチシリン-耐性 黄色ブドウ 球菌(MRSA)7は一般的な抗生物質耐性 BSI です。また、臨床医が多剤耐性の BSI を引き起こす微生物に遭遇することは珍しいことでなくなりました。
このような BSI の影響は、医療チームが日常業務にエビデンスに基づいた実践を取り入れ、感染予防に努める必要性を裏付けています。
血流感染の予防
2021年点滴療法の実践基準(INS/SOP)2 は BSI 予防の優れた関連情報です。
ケアバンドルの使用
INS/SOP 標準50(ページ s 153)による最初の推奨事項は、看護師および医療チームメンバーが「安全性と質の文化に連携したケアバンドルを実装して、感染リスクを軽減する」ことです。
「ケアバンドル」とは、輸液または血管装置が挿入された瞬間から抜去されるまで BSI を予防する、多面的なアプローチです。ケアバンドルは、看護師および患者ケアに携わるすべての人を対象とした教育プログラム、エビデンスに基づいた病院方針の更新、ビジュアルエイド、能力評価、カテーテルのメンテナンスをサポートする備品がスタッフに行き渡るようすることなどから構成されます8。2000 年 1 月から 2018 年 12 月の間に発表された研究の体系的なレビューでは、ケアバンドルが静脈炎および血流感染の減少に役立つことが示されています9。
部位の評価
標準 50 の 2 つ目の推奨事項は、先ほど説明した BSI の症状に対する血管アクセス部位の評価が強調されています。BSI の兆候や症状がある場合、看護師は医療提供者に速やかに連絡し、適切な治療を直ちに開始できるようにしなければなりません2。上記に加え、評価後に部位で何が起こっているのかを記録することは、感染症を早期に検出する上で極めて重要です。
皮膚の消毒の実行
血管アクセス装置を挿入する前に皮膚の消毒2 を行なうこと、および、それを日常的ケアの一部とすることも INS/SOP が提唱する推奨事項の一つです。INS/SOP の標準 33、42、50はこれを幅広くカバーしています。
皮膚消毒の診療的側面には以下が含まれます。
- 患者の、皮膚消毒剤に対するアレルギーまたは過敏症の既往歴の有無の評価2,10,11。
- 石鹸と水での挿入部位の洗浄2。
- ドレッシング材を適用しやすくするために必要な場合は、挿入部位で余分な体毛を剃る2。注: 髭剃りは必ずしも必要とは限らず、場合によっては感染リスクを高めることがある12,13。
- INS が推奨する皮膚消毒剤はアルコールベースのクロルヘキシジン。禁忌がない場合、看護師はこの溶液を使用して皮膚消毒を行なうこと2。
- 皮膚消毒に使用するアプリケータは、単回使用の無菌アプリケータでなければならず、消毒液のボトルなどの複数回使用する製品であってはならない2,14。
まとめ
血流感染には多額のコストがかかりますが、BSI との戦いにおける朗報があります。一部の BSI は予防可能です。医療チームがエビデンスに基づく推奨事項を日常診療に簡単に取り入れることができるように、推奨事項に関するトレーニングを義務付ける必要があります。
INS/SOP 標準 33、42、50 には、血流感染を軽減または予防できる優れた感染予防対策の推奨事項が示されています。